火気厳禁の書斎

名は体を表す。です。

独白 [初出:2013/03/22]

指が動かない。

 
正確に言うと左手の中指と人差し指が、どうしても動かない。
 
数日前、医者は言った。
 
これは病気だと。
 
ナイフで傷つけてしまった指先から病原菌が入り、少しずつ筋肉が硬化していく病気らしい。
 
どれ程力を入れても、全く動かない。
 
治療の方法が見つからないことには、左手から順番に体が侵されていくそうだ。
 
 
得体の知れない恐怖に襲われながら、就寝することにした。
 
 
 
あるアニメを思い出した。
 
ロボットの操縦士が異星人に食べられそうになり、目の前に居る同僚に銃で撃つように懇願する。
 
しかし気が動転した同僚は、全ての弾を外し、操縦士は絶望に暮れた目をして
 
異星人に食べられていく。
 
私が一番よく覚えて居るのはその同僚が生き延びたことだ。
 
日に日に動かなくなっていく体に苛立ちと焦りが募る。
 
もどかしくなって机に使えなくなった左腕を叩き衝ける。
 
私もあの操縦士なのだろうか。
 
成す術もなく、希望すら打ち砕かれ、残る道は死のみ。
 
私もあの、操縦士なのだろうか。
 
ああ、長き人生は続く。
 
光が無かろうと、それは続く。