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火気厳禁の書斎

名は体を表す。です。

或る少年の一生 [初出:2012/04/29]

少年は不潔なものが嫌いだった。

だからそれらの全ては何故汚いのか尋ねた。

「そういうものなの」

「仕方が無いのよ」

 

少年は勉強が嫌いだった。

だからそれらの全てを放棄した。

「宿題やったの?」

「今日、居残りしてけよ」

 

少年は人付き合いが嫌いだった。

だからそれらの全てが産み出す被害について語った。

「何を言ってるんだあいつは」

「きっと自分に友達が居ないのを嘆いているんだ」

 

少年は不自由が嫌いだった。

だからそれらの全てが消えてなくなるよう熱心に祈った。

「君が課題を忘れるなんて珍しいな」

「心配ないでしょう、この成績なら」

 

少年は人付き合いが嫌いだった。

だから昔より上手く自分を隠した。

「へー、ミステリが好きなんだ」

「これから宜しく」

 

少年は未来が嫌いだった。

だから言われるままにした。

「おめでとう」

「これからも気を抜かず、頑張れよ」

 

少年は不特定多数の敵が嫌いだった。

だから戦うのを放棄した。

「今日未明、火災が起きました。警察の調べによると、自殺目的の放火として…」

「何で、死んじゃったのよ…」