火気厳禁の書斎

名は体を表す。です。

罪の味 [初出:2012/04/30]

夜が静寂と闇を運び、朝はさえずりと光を運ぶ。

小鳥の声で目を覚ました僕は、急いでいた。

時計はもう六時二十三分を指していた。

「ヤバいヤバいっ」

翌日用の服を着て寝ておいて正解だった。

僕は冷蔵庫を開け、食料を探す事にした。

「…!?」

赤。

鮮血の赤。

紅蓮の赤。

太陽の赤。

真っ赤な赤が、そこにはあった。

林檎。 

原罪の象徴、林檎。

その林檎が、冷蔵庫いっぱいに詰められていた。

僕は気味が悪くなり、慌てて扉を閉じた。

そして、おそるおそる野菜室の扉を開けた。

しかしそこにも林檎。

冷凍室にも林檎。

これは一体どういうことだ?僕は考えた。

ああそうだ。僕は急いでいたんだ。

目の前にあった林檎を一つ手に取り、一口齧った。

恐怖と焦りと林檎の味は、意外にマッチした。