火気厳禁の書斎

名は体を表す。です。

殺し屋 [初出:不明]

古臭いアパートの戸をノックする。

少し間が空いて、一人の少女が顔を出す。

「どちら様で…、ああ。予約なさっていたKさんですね。少々お待ちください」

パタン、と戸が閉じられる。

Kは今年37歳になる駄目人間で、色んな人に迷惑を掛けてきた。

成人するや直ぐに博打に手を出し、金を借り、その金を返すために博打を打ち、また金を借りるという悪循環に生きてきた。

借金の総額は知らない。

ただ、真面目に働いて返せる金額ではないことは知っている。

「すいません、お待たせしました。こちらへ」

促されるまま部屋に入る。

生活感がない部屋だな、なんて思いながら靴を脱ぎ、リビングへ向かう。

「この中からお好きなモノをお選び下さい」

リビングに置かれた大き目のテーブルには、様々な凶器が並んでいた。

鉈、鋸、日本刀に包丁など、主に刃物を用意しているようだ。

Kはその中から、小さいが機能そうなナイフを選んだ。

「ほう、貴方はご自身の命を絶ちたいのですね?了解しました」

「では、三つのプランから殺害方法をお選びください」

Kは手渡された書類に目を落とす。

『Aコース 五十八万九千円

 第三者に拠る死

 

 Bコース 七十八万九千円

 出血多量に拠る死

 

 Cコース 九十九万九千円

 首を一瞬で切断する、痛みの無い死』

「Bコースは五千五百円払って頂ければオプションの麻酔が付きますが」

「やはり一番人気はBコースですね、傷がつくとはいえ完全に遺体が残りますし」

「ええ。処理の代金も込みでこの値段です。お墓に入りたいという場合は別のプランが御座いますが」

Kは書類のBコースの所に指を差し、財布を取り出した。

「Bコースオプション付ですね。お会計、八十万三千五百円です」

人生最後の買い物を終える。

「えーと、一、二、三、四…丁度です、有難うございます」

少女は机に並べられた凶器をそれぞれ元あった場所に片付け、残るはナイフ一本となった。

「今から作業に入らせてもらいますが、遣り残した事はないですか?」

頷くK。

麻酔注射を腕の動脈に打ち、注射器ごと捨てて、

「数十分の内に麻酔が効いてきますから、暫くお待ちください」

「では、安らかに」

少女はどこかへいってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、少女は戻ってきた。

依頼人が、安価だが劣悪な麻酔に拠って死んでいるかどうかを確認するために。