火気厳禁の書斎

名は体を表す。です。

散文詩

すみれコード再生

45回転の「わたし」が、「あなた」のターンテーブルの上でぐるぐる回って廻って運命を奏でている。レコードの針は今この瞬間も着実に「わたし」を傷つけている。ぐるぐると。まっすぐな傷は小指に巻き付く運命の赤い糸。ぐるぐる、ぐるぐると巡ってでもあな…

十七年

今日まで生きてきた感想を求められても困ってしまう。これだけ言葉を使う僕なのに、一体どう言い表したらいいのか分からない。一切どう言い表したらいいのか分からない。さっきから耳に断末魔の叫びが入ってくる。自殺という名のバンドの曲だ。そういえばこ…

夏の始まり

今年もまた夏が始まる。暑い暑い夏が。熱い、熱い夏が。君は友人と何処か旅行でも行くのだろうか。貴女は恋人と花火でも見るのだろうか。僕は蝉の声を聴きながら夏を感じる。どうでもいい世界のことや、どうしようもない影のことが気になる夏。だから僕は君…

少年少女壊想

僕たちは終わった。 綺麗な指輪も、きらきらのネックレスも、錆び付いてもう輝かない。 一つの季節が終わる。 長い長い、季節が終わる。 このまま君の記憶に留まっているならば、いっそ息を止めていよう。 もう出会うことはないから。 始まることは、ないか…

少年少女懺悔

過去を悔やむのが大人だというのならば、私たちは一体何なのだろうか。 月の満ち欠けに、太陽の傾きに、僕らは何も学ばない。 教科書の文字が漂白されていても、授業は続く。 しかし私たちは寝ていても構わないのだ。 黒板には螺旋の図と赤い矢印。 いつか復…

あいどんわなだい

突然辞めた彼女。 僕は何も言えない。 黄色い球を投げる。 いつもどおりにヘタクソ。 クッキーにかかった白いチョコレート。 君にぶっかけたかった白い現実。 味なんてしなかった。 「お疲れ様でした」。 「ありがとうございました」。 一生の後悔、そんな感…

少年少女回転

レコードを止めるな。 針は血脈をなぞって走る。 巡り回る運命は果たして再生し切れるだろうか。 あどけない恋は再生し切れるだろうか。 レコードを止めるな。 たとえ盤面の血筋が擦り切れて、血塗れになってしまっても。 すみれの花が枯れる前に、早く、そ…

少年少女証明

午後十時の階段を降りる。 狭い、急な階段。 下って真空状態の小部屋へ。 圧縮される僕の存在。 山積みの本は未来を考えてくれない。 明かりと僕と水。 陶器の気持ちは汲み取れない。 布団に潜る。 明日のことを考える。 その瞬間、他人事のような表紙が僕を…

少年少女天球 (改題:幻覚転召)

視えない物が視えるようになった。 人間の中身だとか。 空を飛ぶ電車とか。 私の頭は狂ってしまったのだろうか。 視えない物は視えない。 それが普通なのだろう。 眼が狂ってしまったのだろうか。 世界が狂っているわけが無い。 そうだ。きっと、そうだ。 私…

少女再生 〈連作集:少女終生 了〉

温かく、透明な液体に包まれている。 ここは暗い。 一定のリズムが私を揺らす。 ただただ幸せな時間。 闇の中、私は来るべき時を待つ。 どれくらい時が経ったろう。 どれくらい私は揺れたろう。 私を包む殻が破れる。 冷たい、光る、爪が私を掴む。 やめろ。…

少女終生

悪臭。 腐った脳味噌を容器に入れて歩いている。 狭い教室には黴と性病が蔓延し、顔の無い男女は永遠に性交を続ける。 世界の秩序は失われた。 どこもかしこも狂っている。 どこもかしこも濁っている。 発する言葉はこれで正しいのか。 聞き取る音は言葉なの…

少女変貌

着飾る私は肌にアクセサリーをつける。 生放送は笑い声。 タイムラインはエゴまみれ。 失望。 この世なんてゴミだ。 神様の生ゴミだ。 絶望。 魔法みたいに流れる液。 内腿を伝って流れる液。 存在が無意義に成った今、これ以上病む必要があるのか。 だから…

少女悪逆

「イライラしていた」 「誰でも良かった」 「今は反省している」 罪の意識などない。 残るのは記録だけ。 そこに心情は介在しない。 飼い殺された精神に傷がつく。 あーあ。 もたつく空気をスタバのモカフラペチーノと一緒に飲み込む。 苦い苦い苦い気持ちを…

少女自撮

透明な液をだらだらと垂らす自分と、それを見る自分。 赤い液をどくどくと流す自分と、それを見る自分。 一部を切って売って、私は生きる意味を得る。 とっかえひっかえして、私は生きる。 私は見ている。 切り取っている。 切り取った「それ」からは命の匂…

発信人間

あなたが今部屋の電気をつけていることで、火力発電所からは二酸化炭素が出る。 でもそれはあなたに関係無い。 あなたが今手を洗うことで、海が汚れ、魚が死ぬ。 でもそれはあなたに関係無い。 あなたが今食事することで、何千何万もの家畜の命が奪われる。 …

少女凍結

昔地球は凍ったそうだ。 今私は冷えかかっている。 世界に温度を吸い取られて。 芯まで。 私を凍らせようとする人はいない。 誰も。 その無関心が、私を冷やす。 知らず知らず、凍っていく。 誰も。 私を温めようとする人はいない。 心まで。 世間に温度を飲…

少女顕現 (改題:鎖骨の下)

少女には秘密がある。 右の手首と鎖骨の下。 その硬い四角の存在に気付いたのはもう三ヶ月程前の事だろうか。 皮膚の奥、指先に乗るような大きさの四角形。 同じ頃、私は私の手首を切った。 なんとなく、切った。 それは突風のような感情で、理性より先に刃…